へら鮒情報局

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狩猟はヘラ鮒釣りも含めて、本来「勘に頼る」ところが多くある。
この風が吹くと不漁、西の山が見えなくなると天候が崩れて出漁は止めた方がいい。
あのもじりは見せかけで、こちらのもじりは本物。単なるアブクを泡づけと勘違いしたり、、、、、云々。
本来、算術的であるべきはずのヘラ鮒釣りも、水中での実際の就餌行動は見えないのだから、勘に頼るところのイメージで描いていくしかない。

深く思案することを「さんし三思」という。
よくよく考えることを「さんこう三考」という。

すなわち同じ意味をもつ熟語を繰り返し並べることで、より意味合いが深まるであろう創作四字熟語にしてみた。勘、あるいは経験値と置き換えていい、ヘラ鮒釣りの熟練したエサ使いは深く思案し、よくよく考えて行きつ戻りつするゲームであるから、ゲームで熟語を創作し、創作した瞬間、これは今日の古田のエサ使いそのものだと確信を得たのだった。

揖斐川、長良川、木曽川という大河の終点地に広大な三角州がある。
草木が地中に根を張り巡らせたような形状をした三川(さんせん)の真ん中にあるから、三川フィッシュパークという。   

あくまで算術的でなく情緒的に描写すると、篠突く雨が降っていた。

古田とともに桟橋に出る。

「ウドンセットをやって欲しい」というリクエストは事前に伝えてあるので、釣り仕度は逡巡なく滞りなく進められる。

<釣り方> 1m ウドンセット
竿:   古今8尺
道糸:  プロバージョンV ブラウン 0.7号
ハリス: プロバージョンV 上 0.5号 8cm/下 0.4号 20cm
ハリ:  上 グラン鈎 キープ 7号/下 グルテン鈎 3号
ウキ:  杉山作 Sコンセプト 1番
という、仕掛をセットする。
の、前に、「軽いペレット」30ccを水120ccで溶いておくことを忘れていなかった。

その溶いたボウルに、
*深バラ:     120cc
*オールマイティ: 120cc
*バラケもたせ:  120cc
を加えて一気にかき混ぜた。

<クワセエサ>
*即席ウドン10cc + コーラ10cc(ポンプ出し)
バラケエサは決して練るのではなく、下から起こすように熊手でかき混ぜる。
さぁ、このバラケエサの配合コンセプトに迫ろう。

「軽いペレット」
吸水しても形が崩れずネバリも出ないから、粒状のままぽろぽろと落下して、ヘラに強烈にアピールする。
「深バラ」
段差の底釣り専用バラケとしても使用可能なほど下方に、スポット的に落下するバラケエサなので、ヘラのウワズリにもその効力を発揮する。
「オールマイティ」
麩エサに器用、不器用があるとすれば、まさに「たくみ匠」の称号が与えられるべきありとあらゆるシーンで活躍するであろう逸品。適度な開き、ボソ感、まとまり、と、オールマイティの名をほしいままにしている。
「バラケもたせ」
縦横無尽にバラケる麩は、本来単品でハリ付けすることは不可能である。バラケエサをタナまでは持たせたい。そしてその位置からバラケさせたいという極当たり前の欲求に応えるべく生まれたエサ。

と、古田の解説をト書きにしてみた。では何故、これら四品を配合することにしたのか? ここからは前述した、算術ではなく(1+1=2というような答えが普遍的なものではなく)、イメージ(創造的、かつ流動的)な世界に入らざるを得ない。

まず充分吸水させるため、始めに「軽いペレット」を水で溶いた。それでなくともこれからセット釣りをやる時期というのは集魚効果の著しいペレットは不可欠だからだ。そこへ「深バラ」「バラケもたせ」という二品をバラケエサの代表として掲げた。古田は、である。「深バラ」でなく、セットバラケDやバラケミッド、サラットでも対応できるが、「深バラ」に落ち着いたところが、古田のアイデンティティといっていい。1mのタナだからこそウワズリを抑えたかったに違いない。そしてそれは「バラケもたせ」を選んだことにも共通する。バラケぬきでも良かったが、それだと上方で麩が解けすぎてヘラを1mまで引きずり込めないと考えたのだ。

魚をタナに落ち着かせて釣る、逆にチョイ上っらせながら釣る、人それぞれに決めパターンは違うから、これが古田のアイデンティティ。「オールマイティ」はバラケエサに出会うと極自然な接着剤の役目をなすし、両ダンゴ系のエサに融合するとほどよいボソ感を出してくれるので先発させた。

エサを配合させる時の基本的なコンセプトは、このように考えるべきだと教えてくれたのだった。

エサが着水すると同時に秒針を読む。
空合わせまでの時間、いや秒数は13秒。
三度続けて時計を睨んだが、キッカリ13秒だった。
「セット釣りですが、両ダンゴのように早い釣りをしたいのです」
話しながらも、エサ付け、打つ、眼はウキ一点、そして空合わせとめまぐるしく流れ作業は続く。
タナ1mということもあるが、ほとんどバラケエサのナジミを出すことなく、空合わせをくれるピッチ投法に終始する。
ウキは杉山作Sコンセプト1番、3節出し。

ここからウドンが入ればあと半節なじむ。が、今はそれもまたない。

そんなピッチ投法を30分以上続けても、まだヘラの寄りさえ見ないでいる。
冒頭で述べた「勘」で言えば、気圧の変化や季節の変わり目が不漁の原因だろうか。
科学的、算術的に不漁の要因を追求する辞典は、ここではもたない。

突然、ウキがひったくられるように水中に突き刺さった。
糸ズレだろうがなんだろうが、初サワリにちがいない。
古田はエサボウルの上に皿を被せ、ボウルから少しづつその皿に取りわけて使っている。
こうすることで、陽にあたることなく基エサの乾きが抑えられるし、一部の皿のエサと合体することでボソも取り戻すことができる。その皿のエサ(いま使っている半握りほどのエサ)に手水を打ち、少しだけしっとり感を出した。
二投、三投としっとりボソのバラケエサで様子をみてみる。

古田のエサ打ちは上手い。
なにより、古田のエサ付けは上手い。

トリセツ通りに作れば万人同じエサが作れるのに、釣果に差が出るのは「付け方」の差だと考えていいだろう。
一発目が釣れたのは、エサ打ちから40分も経ってからだったが、まだ濡れていない玉網で掬うには道端に落ちている1円玉を拾うか拾わないかで迷うような型(ヨタベラ)だった。

「初アタリがウキをひったくるような糸ズレ、やっと釣れてきたのがヨタですから、今日は本当に悪そうですね」

「うん、でもそれだからこそ、どのような手を見せてくれるかという興味のほうが先に起つけどね」

傍観者は、車夫馬丁の芝居評(烏合の衆の井戸端会議)のように気楽で好き勝手でいい。
水中を覗いた訳じゃないから、ヘラが何に機嫌を損ねているのか寄り添って尋ねたこともないから、あれやこれやの評論家になるしかないのだ。
釣りは算術的・科学的ではなく「勘」あるいは「経験値」に依るところが大であると先に述べた。
しかしながら、この稿を勘だけで埋めるわけには矜持が許さない。
「1+1=2」といった、最高裁判所でも確定判決のお墨付きをもらえる答え、とまではいかなくても「1+1≒2」(数式にはかなり無理があるが)程度の答えは導き出したい。

古田の眼は、周囲の状況も垣間見ながら、眼だけじゃなく頭の中の脳の皺まで活発に動き始めたようだった。

「まず、小粒ペレットをパラッと振りかけてみます」

投餌点には、わずかだがヨタ、小ベラの影が見えるようになった。
仮に<イメージその①>とすると、ようやくヘラが寄ってきたが、それらは活性のある従来のヘラではなく、・・・ヨタ化したものや新子孵りの小ベラの類のようであるので、もう少しエサをなじませてついでにそれ等も落ち着かせたい。そこで、「小粒ペレット」の「粒子が細かく麩との融合性に優れている」「多少の比重と本来の特性である集魚力」を利用したのだ。この時も、皿にある基エサの一部にのみ添加したから、基エサは基エサで残っているのは言わずもがな。

この結果は即座にウキに現れた。水面に出ている三節のトップが、二節半なじみきる(すなわち水面ギリギリまで)寸前にスパッと消し込んだ。

<イメージその②>ウキがなじんだのは小粒ペレットの比重のせい?いや、そうではなく小粒ペレットの上記の二特性でヘラが下方向に興味を示したため、オモリ以下の仕掛(オモリ、ハリス、ハリ、エサ)に圧がかかったからだろう。
風呂釜で(魚がいないような所で)ウキを測れば、エサの重みやバラケのヌケ具合をしっかりと正確に伝えるウキも、魚がいる所ではその魚の「エサの嗜好」「体調コンディション」「行儀の良し悪し」「仲間との協調性」までも教えてくれるのだ。硬いエサが好きな時もあれば柔らかいそれが好きな時もある。体調が悪いとエサの芯には見向きもしない。行儀がいい魚は上ずったり下ずったりしないし、協調性のある魚は、ウキに出る食いアタリも小さく鋭い。エサが確実に付いているのにウキがなじまなかったり、エサはもうないはずなのにウキが潜ったり。すべて、魚の現在状況がなせる業。そして、それらはすべてウキが教えてくれる。
以上、イメージその②。小粒ペレットの効果は確かに出た。

しかしながら、快速ウィングがトライを決めるまでの華終にはいたらないでいる。「釣りきる」という完成には遠い。
古田の三思三考はつづく。

朝一番に作ったエサで終日釣れ続くことは、まずないだろう。朝一番に作るエサは、この日の魚のコンディションを予測し、あるいは試釣したデーターをもとにし、あるいは自分の引出しにある「持ちエサ」を宝箱から取り出してまで熟考を重ねたものであるはずなのに、である。
理由は上記に触れた、魚達の「仲間との協調性」や「行儀の良し悪し」そして、経験値から述べると気候の変化などが挙げられよう。
そして、その都度、たびごとにエサをいじくり変化させていかなければならないところに、釣りの面白さがあるのだった。古田はあらたにエサを作り替えることにした。

(う~ん、これだろうなぁ)
心と頭の中の音韻が聞こえてきそうだった。
そのエサというのは、
*深バラ:     120cc
*オールマイティ: 120cc
*バラケもたせ:  240cc
*水:       120cc
という配合である。

すなわち、朝一番に作ったエサから、「軽いペレット」を完全に抜いて、「バラケもたせ」を多めに入れたものである。

<イメージその③>
今日のヘラは非常に活性が低いため、バラケを打ち続けると寄るには寄るが、食い気が非常に乏しいようだ。この状況をイメージするに、バラケエサが開きすぎるとそのこぼれた微粒子の麩のみを追いかけているのではないか?ましてや、クワセの即席ウドンには尻尾で叩くくらいが関の山ではないか? と、・・三思・・三考したのである。
そこで、「バラケすぎないバラケ」「よりダンゴに近いバラケ」のほうがベターだと考え、軽いペレットをやめて逆に、バラケもたせを多くしたということだった。この考え抜いたエサをしばらく打ち続ける。

古田のウキ。
やや、受けが出ながらもバラケエサは入っていく。と見るや否や、チクッと鋭く入った。

古田が追い求め、描いた通りのかたちで乗った。

その後も、驚嘆するような釣果は望めるはずもないが、_____表現するとすれば「ぽつぽつ」_____というありきたりになってしまうが、「ぽつぽつ」でも釣れることこそヘラ釣りの真骨頂だと感じ入ったのだった。

以下、余談。
二週間前、古田に三人目の女の子が産まれた。
女の子が三人で「三姉(さんし)」。
三思(さんし)のごとく、よくよく考えたかは、この稿の本題ではない。


[古田真一プロフィール]
古田真一プロフィール
1976年生まれ、岐阜県在住。
Vステージ所属。BASIC・VARIVAS・GRANフィールドテスター。

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