へら鮒情報局

RSS
 

腕時計の秒針。
タイム計測。
1. 2. 3. 4. 5. … 30秒
で、空合わせ。
 
エサ着水からカウントして、ジャスト30秒で空合わせ。
 
途中、ランダムに計測したが、誤差プラスマイナス2秒という中でのエサ打ちサイクルが繰り返される。
エサが打たれる。スタートと口に出さず合図。
片目で時計の秒針、もう片方の目でウキを追う。
サワリは、ずっとある。が、毎回釣れるアタリが出るわけではない。
そこでエサを切る、空合わせ。
30秒。いつも決まって30秒。
土屋サイクル。
意識して、時計を見ながら打ち返すのではなく、自然と自身の体が覚えた、血肉に溶け込んだ30秒だと思う。
だから、「土屋サイクル」。
サイクルという言葉にすると、それは自体は羽毛のように軽々しいが、名手に手の遅い人はいないという愚説を展開する筆者とすれば、30秒サイクルを常に維持できる、それも意識せずにできる釣法に驚きを隠せないでいた。
 
甲南へらの池が誕生して20年になる。
栄枯盛衰を繰り広げてきた管理池の中にあって、甲南は当初、人工的に掘って造った池だけに何より「水」が心配された。今も正直、高水準の水質を維持しているとは言い難いが、そこを知恵と努力でできる限りの管理を絶やさないでいる。
汲み上げた地下水を一旦大樽に受け濾過した後、上池で寝かせ少しずつ本池に落としている。大樽の中のシュロ、砂利、炭を敷き詰めた循環水は上池で休ませることで、ミネラルを含むようになり、太陽に晒されることで殺菌される。日本人が昔から井戸水を飲料用に工夫した手法が、なんと管理池でも活かされているのだ。

 
 

二号桟橋手前事務所向き。
ここだと12尺で底が取れる。
土屋は、古今8尺を継ぐ。
いやその前に、粒ペレF 60cc + ダイレクト 60cc + 水180ccを作る。

それから竿を継ぎ、タナを1mにセット。
仕掛けは、
竿    古今8尺
道糸   スーパーステージマスタースペック0.6号
ハリス  スーパーステージマスタースペック 0.3号 7cm/35cm
ハリ   上グラン鉤6号 下グルテン鉤2号
ウキ   杉山作Sコンセプト1番 パイプトップ
     (ウドンを付けて水面に2節出し)
「どんなバラケがいいのか分かりませんから、定番から入りますね」と言いながら、先に水に溶いておいたF、ダイレクトの中に、単品爆釣D 240cc + 単品爆釣C 120ccを加えて均一になるようにかき混ぜる。決して練るのではなく、あくまでも均一にするのが目的だから、特に何回かき混ぜるかという回数にはこだわらない。
*粒ペレF … 60cc
*ダイレクト … 60cc
*水 … 180cc
(5分以上放置)
*単品爆釣D … 240cc
*単品爆釣C … 120cc
クワセエサは、
*レンジタピ … 1袋
*水 … 80cc
を、500Wのレンジでまず60秒加熱後、取り出してかき混ぜ、今度は30秒でまたかき混ぜること三回で完成。ポンプで水の中に絞り出し、安定剤にクリープを振りかけて持参したもの。
これらの準備が整って、さあエサ打ちを開始する。
 
第一投目、早くも投餌点周辺が、ヘラでワサワサし始める。

本日は土曜日だが、池全体で釣り人の数は30名程度。ヘラがハシャギすぎることを考慮して、びっしり並んだ真ん中に土屋を入れたが、それでも甲南の魚影の濃さは凄い。

バラケエサは両手でハリ付けする。ウドンは指でちぎる。
これが土屋流。
それぞれに意味がある。
まずバラケエサについては、「片手でハリ付けできるようなタッチのエサはバラケには向いていない」という持論。
ウドンを毎回手で切るのは、「一投一投ウドンの大きさを変えたいから」という考え。
バラケエサについては、絶対的なボソを維持するため、根本的に片手付けには無理がある。
それを無理して片手付けするためには、配合品種にまとまり感のあるものを入れるか、あるいは、ボウルの中である程度コネて丸めておかなければならないはず。
だから、土屋は必ず両手でしかハリ付けできないブレンドバラケを選び、そのように実行しているし、それも凄く丁寧なだ。                     

ウドンは、ハサミで何個か事前に切り置きする人が多いか、マメ(?)な人は作った時に切りウドンにして持参するのがほとんどだと思うが、それだと、大きさが均一にならざるを得ない。中にはもっとマメ(?)な人がいて、細いのとやや太いウドンの二種類準備する人もいることはいるが、これも面倒な話しである。
ウドンをもっと早くタナに入れたいという場面や、カラでも何でも大きなアタリが欲しいという瞬間には大きくちぎってみる。逆に、魚にアピールしたいとか、この一投で食わして見せるというシーンには小さくちぎってハリ付けする。
これには、その都度「指でちぎる」というのが打って付けだったのだ。

ウドンを付けて、水面にはウキトップ二節出し。
バラケエサを付けて打つと、ウキはなじみかけて一旦止まり、最終的には二節残して静止する。ということは、ウドンがタナに入った段階ではバラケはヌケているということだ。
「タナの少し上、オモリ付近でバラケをほどけるようにしています」と、土屋。
魚の寄りが薄い時は、ここからの下バリの入り方がよくわかるのだが、先ほど述べたように、一投目からワサワサ魚が騒ぐようでは、ウキの複雑な動きにその解明は難しい。
エサが付いているのに、ウキがなじまない。
エサが落ちたはずなのに、ウキがなじむ。
このような真逆現象が起こるのも魚の寄りに起因している。
ヘラがエサをポンピングする。アオリで、圧がかかる。水に、ラインに、オモリに、そしてそれがウキに伝わるのだろう。
そんな中でも、エサが確実にタナに入るようにというのが、土屋の基本。
バラケエサを両手でしっかりとハリ付けする時に、指圧ひと押しで調整するという。
 
エサが綺麗にハリ付けされているのは視認できるが、その時にどれほどの圧がかけられてかまでは本人しか分からない。ウドンも大きくちぎって付けることで、下バリの入り具合を確認したりしていて、見るところ最大直径1cmにも及んだが、それはすべてウキとの相談ということに他ならない。

その内、別ボウルに粒ペレF60cc + 水30ccを素早く溶いておき、基エサに振りかけた。
当然、ヘラを鎮めるのが目的だが、今日の甲南はそれほどたやすくなさそうな気配を漂わせている。
すでに釣り始めから一時間は経過していて、7・8枚は釣れているのだが、まだまだ納得のいく釣れ方とは言い難いのだろう。しばらく思案していたが、「やっぱりDを抜いてみますね」と、
*粒ペレF … 60cc
*ダイレクト … 60cc
*水 … 180cc
*単品爆釣C … 240cc
*ベースハイパー … 120cc
という配合に作り替えた。
Cを増やしてDを抜き、代わりにベースハイパーを加えたのだ。
 
その理由は、この魚のハシャギに対してD240ccではバラケすぎる。依って、Cを増やして、エサをまとめる役のベースハイパーを加えてみたのだった。

Cを増やしたことで集魚効果は落ちない。元々Fとダイレクトにはたっぷりと吸水させているからバラケ性は抜群だ。そこにハリ付けしやすく、圧のかけ方も自在になるベースハイパーを1杯足したことで、途中のバラケのほどけを多少抑えてタナにまで届けることができるというブレンドであった。エサ個々の持っている特性をしっかりと掴んでいるからできるワンランク上のエサ合わせである。
 
「多少抑えて」という曖昧な記述に下線を引いた。曖昧さゆえに、わざと下線を引かせてもらった。
土屋がヘラを引っ張るのを横目で見ながら、本日の結論は、このあたりにありそうな予感がした。

 
 

途中、ハリスを35cm→30cmと短くした。その時下バリもグルテン鉤2号から3号と大きくした。これのみで、あまり仕掛をいじくったりはしないという。ハリスをセンチ刻みで短くしたり伸ばしたりするよりも、もっとバラケエサに集中したほうが得策だという考えなのだろう。
実際に今のウキの動きを見ながら、次のバラケエサのブレンド、大きさ、圧のかけ方を決定しているはずなのに、ハリスの長さをいじくるようではその決定の意味がなくなる。
 
カラツンに対してハリスを短くする。エサが入らないからハリスを詰める。次の一投は案外食うこともあるが、これはハリスチェンジにかけたタイムラグ(しばらく落ちてこなかったエサが急に落ちてきたから)か、(しばらくエサが落ちてこなかったから魚が間引かれた)ということだと考える。そしてその一枚が釣れた後は、サワリもなくなったと、ハリスの長さを元に戻す作業に追われる始末は幾度となく経験されたことだろう。
 
カラツンは本当にエサ吐き出しのツンなのだろうかという疑問を持つ。エサを煽っただけの時、魚が寄りすぎて糸に、オモリに擦れた時のツンではないのか。そして、そうならばハリスではなくエサをいじくらなければならないはず。エサが入らないのならば、入っていくように、丁寧にハリ付けする、圧をもうひと押しかけてみる、エサ持ちのいい品種か、比重のあるエサをパラッと振りかけてみる。
 
土屋は、ここまではとっくに済ませていた。
基本的にバラケエサは両手でハリ付けするから、丸く丁寧なハリ付けと言える。
基エサにすぐなじみやすい「粒ペレS」をパラッと振りかけもした。
「粒ペレF」をあらかじめ水で溶いておいて合体させたことも先に述べた。
そして今、単品爆釣Dを抜き、まとまるバラケエサの方向に向かうためベースハイパーに替えた。
 
効果は目に見えて現れた。
ウキが立ってすぐの余計な動きがほとんど出なくなった。今までは、オモリ付近の位置でほどけていたバラケエサが、もう30cmほど下まで行ってほどけるようになった。ウキトップ二節が潜るか潜らない所まで行ってすぐに帰ってくるから、エサのほどけ位置が非常によく分かるのだった。
バラケエサそのものをハリ持ちよくしたことで、落下途中でこぼれる麩が減り魚のハシャギが抑えられた。
しかし、バラケ性を抑えたということは(Dを抜いたということは)、横に大きく広がる麩が減り、漂う麩の量が減り、魚へのアピール度が減るという諸刃の剣なのだった。
 
土屋も感じていた。
 
「行きつ戻りつ」。
 
エサは、朝イチに作ってそれで終日OKのはずがない。まして、久々の池で状態が分からない中でのこと。
そこでまず、自身が今シーズン定番にしてきた配合から入った。
●粒ペレF・ダイレクト・単品爆釣C … 不動のレギュラー
●単品爆釣D … DH
次に、
•ベースハイパー … 代打
という構図が成り立つわけだが、この代打にも相手投手が変わる(魚の状態が変わる)ことによって、代打の代打を準備する必要性が生じるのだ。
土屋が選択したのは、
•ミッド … 代打の代打
であった。
エサを柔らかくしたり、逆に硬くしたり。圧を加えたり、ラフ付けしたり、また丁寧に付けたり。代打を指名したり、その代打に代打を出したりと、行きつ戻りつがエサ合わせのコーディネイトというに他ならない。
そしてそのややこしいエサ合わせを、①を固定して②のみの変化で対応することで、随分簡略化している点も土屋の土屋である所以と特筆に値する。
「混ぜ物を少なくすることで、何がジャマしているのかがよくわかりますから」
小気味いい合わせが、殷々と響く土屋の竿さばきであった。

 
 

バラケエサをバラケ性の強い順に分類してみた。
ダイレクト、粒ペレF、粒ペレS、バラケルペレットは、バラケエサというカテゴリーには入らない添加剤だが、バラケに必ず使う種類であり、何より「絶対に粘らない」ものなので、この4種類を基点として順次バラケ性の弱いものへと列記した。

さぁ、ここからだ。
バラケを「多少抑えて」という曖昧な表現を避けるために、逆に乱暴な分類をしたことは否めない。75%、50%という根拠はあまりにもノンサイエンスである。
しかしこの釣りは、エサの特性をまず大雑把に掴むことから始めるということが重要だし、エサを何種類も使わず、前述の①②程度の単純使いが正解なのも事実。
だから、大雑把に、単純に、でも少しは科学的に%(パーセント)を使ってみたのだ。
単品爆釣Dをベースハイパーに替えたのは、エサのまとまりをよくするため。しかしまとまりのいいバラケを打ち続けると、徐々に魚が減るか、えさがポンピングされて食いアタリに繋がりにくくなってきた。そこで土屋は、ベースハイパーをやめ、ミッドにチェンジした。
分類表で見ると、単品爆釣Dとミッドは同じ枠にある。
しかし、バラケ性はほぼ同じでも、粒子の粗さ、集魚力、比重、他のエサとのマッチングは全然違う。そこまで把握して漸くエサ合わせが始められる。だから、バラケエサのバラケ具合は単純に頭に入れておくのがいい。
 
朝イチに作ったエサで一日中釣れ続くことは、まずない。
魚の状態は、その時のヘラのコンディションで変わるし、一枚釣っても変わる。いや、隣の人のエサ打ちでも変わるから、常にエサをいじくる必要がある。
土屋も今日は大きくは三回エサを替えた。三回目のエサが正解ではない。きっとこのまま釣り続ければ、また単品爆釣Dや、ベースハイパー、あるいはもっと違う品種のバラケエサの出番を待たざるを得ないかもしれない。
いや、しれないではなく、きっとだ。

 

[土屋健二(つちやけんじ)プロフィール]
岐阜県大垣市在住。
中京地区では若くして頭角を現し、小気味いい回転の速い釣りを得意とする。
Vステージ副会長。VARIVAS、GRAN、BASICフィールドテスター。

Pagetop