へら鮒情報局

RSS
 

まずはこちらのリンクを見てほしい。
▶6月5日 茨城県筑波湖
▶4月3日 埼玉県椎の木湖
▶3月13日 茨城県三和新池

以上は、「へら鮒情報局」に公開されている直近の釣行データである。
注目してほしいのはその釣果。大会であれば常に上位。そしてもう一つ、常にロングハリスなのが際立った特徴だ。
 
まだある。
2015年12月20日(日)椎の木湖・・・30.08kg 池全体で3位/ハリス上15cm/下95cm
2015年11月22日(日)清遊湖・・・33.4kg 56名参加の例会中1位/ハリス上15cm/下80cm
2015年10月25日(日)野田幸手園・・・24.6kg 58名参加の例会中1位/ハリス15cm/下70cm
わずか数ヶ月遡っただけで、成績上位・ロングハリスの記述が目に飛び込んでくる。
 
「仕事の関係で日曜日しか釣りに行けません。パーフェクト・サンデー・アングラーなのです」
「でも逆にそれは凄いことですよね。平日のガラ空きなら誰でも釣れるわけですし」
本当に特筆すべきことだと感心した。
釣行は、月に4・5回の日曜日のみ。それも必ず毎週欠かさず行く。そして、ロングハリスで周囲を圧倒する。一度生で見てみたい。そしてできることならその奥義を解明してみたい。ずっと願っていた。喉の渇きに耐えかねるほど渇望していた。その想いがやっと、やっと実現した。

今稿には、一体何度「ロングハリス」という言葉が出てくるのだろうか。
取りも直さず、その原因は、最近「ロングハリス」を使う人が減ったからではなかろうか。ダンゴにしろ、セットにしろ、短ハリス全盛の時代である。
どちらがいい、悪いに言及しているのではない。正直、ロングハリスより短ハリスのほうが釣り易いがため、流行しているのだろう。
ロングハリスだと、魚に煽られやすいため倒れ込みに時間がかかる。その途中で食ってもウキにアタリが出ない。クワセとバラケの同調が難しくなるうえに糸ズレも起きやすい。
準じて、短ハリスはこれらの逆ということで、主流となり得たと考えるのだ。
だったら、井口が自説を貫き、ロングハリスにこだわり続けるのは何故なのか。それも、椎の木湖、清遊湖、富里の堰、幸手園等の関東屈指の名立たる管理釣り場で、日曜日ともなればほとんど満杯の中で、輝かしき実績を連発し続けられるのは何故なのか。
ステージは、富里の堰・西桟橋・95番と定め、井口は万力を締める。
 
まず、本日の釣り方と使用するタックルは、
竿    16尺 1本半のウドンセット
道糸   プロバージョンVグリーン 0.7号
ハリス  プロバージョンV 上0.4号 10cm/下0.4号 70cm
ハリ   上グラン鈎ゴールド 8号/下ウドン鈎 4号
ウキ   くし玉8号 ボディ8cm パイプトップ11節(ウドンを付けて水面7節出し)
というものであり、やはり特筆すべきは、下ハリスが70cmと長いことだろう。
 
「いや、上バリもグランの8号と大きいでしょ、まして金バリですし」
「それにもなにか理由はあるのでしょ?」
「これからお見せしますが、まずバラケが大きいのです。そして、そのバラケを目立たせたいのです。目立つための金なんです。たまには、空バリも食いますしね」
最後のほうは、目尻の皺で笑いながら答えてくれた。
バラケが目立つ(上バリが目立つ)、というのもカラツンの原因となるから、敬遠されがちな傾向にあるが、井口は意に介さないようだ。
それもそのはず、「目立ってこそのバラケエサ」に異を唱える人はなかろう。
 
次にエサ。
いや、前後したが、井口が釣座に着いて最初にしたのは、エサ作りだったのだ。
「いつもそうですよ。麩が水を吸うには時間がかかりますから、まずエサ作りから始めるようにしています」
最初に作ったバラケエサの配合はこうだ。
*ジャストミート  240cc
*アンダーキープ  120cc
*粒ペレF      60cc
*水        150cc
*オールラウンド  120cc
*粒ペレG      60cc
次に、クワセエサのウドンは、自宅で準備してきたもので、
*レンジタピ    1分包
*牛乳       2cc
*水        90cc
を、切りウドンで持参。
 
ここでは、チャレンジパックシリーズが初登場なので、それぞれの特徴を簡単に記しておく。
まず、バラケエサが「ジャストミート」「アンダーキープ」の二品。
ジャストミートは、つぶれにくい粗い麩が練ってもバラケて水中を漂う、バラケエサのベースエサ。
次にアンダーキープは、ジャストミートと同じバラケエサでありながら、比重があるため縦方向へのバラケ性に優れていて、深いタナに向いている。
井口が、後から加えた「オールラウンド」は、比重も軽く粒子も細かいため、調整エサとしてその名の通り、あらゆるシーンで活躍が期待できるもの。
「私自身も、このチャレンジパックシリーズを使い始めて間がないですし、今日は色々なパターンを試してみたいと思います」
といいながら、早くも第一投を打ち込んでいる井口に慌ててレンズを向けた。

「この場所では、チョウチンは無理ですよね?」
「先ほど8尺で計ったのですが、底に着いてしまいます。で、16尺1本半のタナにしました。でも、自分の釣りは、チョウチンも1本半も同じ考えなのです」
池なりの微風がある中、井口のエサ打ちが続く。
井口のエサ・仕掛けであらためて驚いたこと。
三点。
まず、バラケエサとクワセのウドンの大きいこと、大きいこと。

バラケエサは優に500円玉より「デカイ」。
ウドンも、普通に使うにはこの4分割で充分という大きさである。
「バラケはいつもこの大きさですよ。いま、ウキのパイプトップが水面にウドンを付けて7節出ていますが、1節残しまでなじませます。ということは、タナまで必ずエサを入れます。ウドンが大きいのも、早く下ハリスをタナまで入れて張らせたいからなのです」
以上が、驚いた二点。
 
残りの一点は、あらためて、ロングハリス・70cm。
 
周辺の釣り人も、ほとんどがウドンセットをやっているが、誰一人としてこのようなロングハリスを使っている人はいない。
その人達に、ハリスの長さを聞いてみたところ、昨今の常識(?)通り、上バリ5cm〜8cm/下バリ25cm〜40cmがほとんどであった。それが当然と解釈していた筆者からいえば、井口は非常識(?)ということになりかねない。
釣りに「常識」「非常識」は存在しない。へら鮒の就餌習性の変化に伴い、釣り方やエサも随分変化を重ね進化してきた。二本バリ、グルテンやトロロエサの登場、段差の底釣りやヌキセットという新たな釣法等々、僅か30年前と比較するだけで隔世の感がある。
いや、有り余る。
常識は、明日にも非常識となり得るのが釣り方であり、それがなければへら釣りは衰退していたことだろう。
非常識が、明日には常識となり得る。文化、文明、学術、テクノロジー等々は、常識から転換発想することで進歩してきたという歴然とした事実が存在する。
 
「サワリませんねぇ、エサ作り替えてみます」
エサ打ちから30分。井口はそう言うなり新たにエサを作った。
*ジャストミート 360cc
*粒ペレF      60cc
*水        180cc
*アンダーキープ  120cc
*オールラウンド  120cc
「ジャストミートを多くすることで、バラケ性が増したと思います」
新しいエサを、大きく付ける。

そして、エサがなじんでいって、水面には1節残し。
すぐに、スッ、スッとウキが上がってくる。
このリズムでは、下ハリスはまだ垂直に垂れ下がっていないはず。
ウキにもたれかかるようなサワリが出る。
すると、すかさずサソイを入れる井口。
「えっ?」
「他の人は、サワっている時は誘うなといいますよね?でも、私は違うのです。ヘラが来ていると考えてバラケをもう一度揺すって落とし、アピールしてやるのです」
ジャストミートを増やしたことで(バラケ性を促進したことで)、サワリが明らかに多くなってきた。
そして、ついに待望の一枚目、それもびっくりするほどの大きなアタリ、ウキから煙が出るような力強いアタリを見せてもらったのだった。
ここまでに理解できた井口流の釣り方を整理する。
バラケは大きく付け、配合が違えどもなじみ幅は常に水面1節出しにして、決して潜るようなことはない。また、そこからのウキの戻りスピード(バラケ方)は、配合品種を替えることによって操作する。エサのハリ付け方法は変えない。
サワリが出たら必ず誘う。このサソイのあとに、大きなズバッとしたアタリが出るようにするのが理想ということなのだった。

今、シャッターを切れ!
レンズで広角に標的を探っていると、必ずそう聞こえてきそうな「獲物」がそこにある。
それは、「VARIVAS」のロゴマーク。
バリバス、というひびき・韻もさることながら、刷入角度におしゃれ感が溢れ出ている。

井口の黒字に金文字の、VARIVASのロゴが、躍動する。
と、錯覚させるほど、一連の動作にリズムがある。
エサを付ける。打ち込む。なじんでからのサソイ。アタリを取る。釣れて掬う。次の一投。この作業工程が澱みなく、実にテンポよく続けられていく。
実にあたりまえのことなのだが、ついつい早いアタリを取ったり、あるいは待ち続けたり、サソッたり、サソワなかったり、という釣りをしている人は多いはず。
井口の「ルーティン -routine-」は、ビート ポップな小気味いいリズムを醸し出す。
「それからもうひとつ、セットでのエサ打ちは必ず落とし込みですね。エサをウキが立つ位置に打ち込んでやることで、一直線にバラケを落としてやったほうが良いに決まっていますから」

竿一杯のタナ(チョウチン・テンテン)ならば、それほど難しいことではないが、今日のように16尺1本半のタナでは、ある程度の技術を要する。まずエサをウキが立つ位置に打ち込み、その上にウキを被せていく落とし込みは、セット釣りの必須メソッドである、と井口は強調する。
ここで、多少の想像は許されてもいいと考える。
オモリは真っ先にタナに落ちていく。それに引きずられるようにエサも落ちていく。しかし、井口のバラケエサの大半は、タナに届く前にハリから剥がれていて、下バリのウドンが垂直に張ろうとする頃にタナに届きはじめる。ウドンに被さる。もし、振り切りで投餌すれば、ウドンがぶら下がっている所よりかなり前方に、バラケが落下していて、決してウドンとバラケが同調することはないということだ。もしヌキセットで、バラケを水面直下ですべて抜いてしまう場合は、なおさらということなのだ。
サソイ方は、タテ方向ではなく、横にウキを揺らす程度。この動作でタナまで届いたバラケを揺すってやることで、再アピールする。
このあと、ズバッ!
が、理想形なのだが、そうそう上手くはいかない。
「今日の富里は悪いですねぇ。周りも全然、竿立ちませんし」
春の乗っ込み期を過ぎた直後にある倦怠期なのか、気圧変動によるへら鮒に対するプレッシャーなのか、ポツポツと釣る井口が目立つほど、周辺は釣れていない。
 
井口は、今バラケエサを探っている。
井口でさえ、このチャレンジパックシリーズを手にして日は浅い。
なじみ幅。そこからヌケるワンポーズ、芯残り、寄せ効果、ウドンへの同調リズム。
チャレンジパックと従来品との相性・いいとこ取りを、模索している。
あのエサ、このエサと、目分量で足したり振りかけたりしながら、ウキと相談している。
もう少しすれば、本日の正解エサが出来上がるはずだ。
ロングハリスで単純に疑問を感じるのは、カラツンが多くないか、ということであろう。
単刀直入、井口に疑問をぶつけてみる。
「もちろんカラツン多いですが、その時は、ツンアタリでも弱いか力強さがない場合ですよね。私の場合は、これは食っていなければならないというアタリで空振りが続いた時は、逆にハリスを伸ばすのです。理由ですか?それはですね、ウドンにはあまり興味のない多少ウワズリ気味の魚が、バラケエサのやや上方に集まっていると思うのです。そして逆に、その下方にこそスレていない良い魚が待っていると想像するからです」
釣りは水中をイメージすること。
そしてそのイメージを実現させるために、エサを合わせていくことにある。
ヘラ釣りで最も嬉しい瞬間は、イメージ通りにエサをいじくっていって、ドンピシャ釣れた瞬間といっても過言ではない。
「粒ペレG」「粒ペレF」の出現で、魚へのアピール度は以前より随分増したように思える。
そしてそれは、広範囲に横へ広がるのではなく、縦にタテに落ちていく。スレた魚はこぼれた麩エサの微粒子を追ってウワズルが、活性のあるヘラはその下で待っている。
だから、井口は当初のハリスを70cmから80cmに伸ばしてみる。厳寒期ならいざ知らず、ダンゴでも食いかねない盛期にロングハリスをまだ伸ばしていく。
「そのためですが、早く下ハリスを張らすためウドンが大きいのです。ハリもこの時期グラン4号はやや大きめです」
 
クイッ、クイッと竿先を斜め右に煽るようにサソイをかける。風が右手から吹いているため、真正面に戻すような仕草。ウキがなじみ直して、ワンポーズ、、、、、、、、、、ズバッと入る。
「エサの配合を色々いじくっていて、ようやく正解が見つかりそうですよ。あれ混ぜ、これ混ぜしていますので、きちんと分量を整理しますね」
新ベラと思われる強引きの魚を上手くあしらいながら、玉網に掬う。
今日の富里のコンディションはよくない。周囲の竿立ちも稀にしか見られない中、井口はまったくめげることなく、もう一枚、もう一枚と釣り込んでいく。サンデーアングラーとしては、タフコンディションこそ当たり前なのだろうか。

新しく、計量カップを使ってエサを作り替えた。
今まで、基エサに目分量で足したり引いたりして、エサ合わせしていたものの整理ができたようだ。
*ジャストミート  360cc
*粒ペレG      60cc
*水        180cc
*アンダーキープ  120cc
*オールラウンド  120cc
このボウルを基エサとして、別ボウルに
*粒ペレF      60cc
*ダイレクト    60cc
*水        120cc
を作り、二つを合体させた。

ジャストミート、アンダーキープ、オールラウンドの説明は前述したが、充分に吸水させることがなにより肝心であることを再度念押ししてくれた。粒ペレFとダイレクトを別ボウルに分けて吸水させたのは、それらの麩エサの吸水の邪魔をさせたくないからだ。
「粒ペレF」は、ペレットの粒自体が吸水しても潰れないため、ポロポロ落下してヘラにアピールする。
「ダイレクト」は、経時変化することもなく、決してネバリが出ない。
そして「粒ペレG」は、吸水後に性質、大小の違いある麩粒子それぞれをつなぎ合わせるというペレット粒に変化する。従って、これのみ基エサボウルに麩エサと同時に入れたのだった。
「今回は、チャレンジパックシリーズの中の三品のみの使用です。バラケエサである二品と調整エサ一品だけなのですが、これらのエサのコンセプトは単純明快ですから、従来品との配合も分かりやすいのが特徴ですよね」
時間をかけて充分に吸水させたエサをハリ付けする。         
相変わらず、大きいバラケエサだ。
「本当はね、ハリ付けしやすいエサはバラケエサではないといわれたものですが、この配合だとほら、簡単でしょ」
エサを替えても、いかにハリ付けしやすいエサにしても、ウキは潜ることなく1節残しで止まる。だから大きなバラケでウキが潜ってしまい、「タテサソイ」でバラケを落とすような動作は一切ないという。
冒頭「ビート ポップ -beat pop-」のリズムでエサを入れる、と謳った。
「ビート」とは、強弱ある拍子であり、「ポップ」とは特別異なることなく普及的な手法ですよ、という意味を込めた造語だった。
井口のロングハリス。
結論を言うと、やっている手法は従来の誰もが考え得る「手」。
しかし、その「手」に強弱があり、とにかく回転がすばやいのだ。
エサは必ず入れて釣る。タナには入るが、そこから早くヌケル。誘う、ツン、合わせ。
そして、もう次のエサ打ち。
このテンポで大きなバラケを打たれたら、そしてそれを必ずタナまで入れられたら、誰も敵い(かない)はしない。
ほら、また合わせた。

また、新ベラを掬った。

 


[井口明人(いぐちあきと)プロフィール]
FBクラブ、松江鮒友会、龍生会所属。VARIVAS、GRAN、BASIC フィールドテスター。
サンデーアングラーながら、超ロングハリスを駆使したセット釣りで常に好釣果を叩き出す希代の釣り師。

Pagetop