へら鮒情報局

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両ダンゴの釣りで重要なポイントを考えてみた。
まずひとつは、指先大の大きさで打ち込んだダンゴを、いかに開かせ食い頃と言われる大きさにしていくのか、エサの芯とよばれる小豆大までハリのフトコロに残せるか。次に、ダンゴの芯が残せることを大前提に掲げながら、その芯と成り得るまでに要する時間・過程ではないかと考える。
ダンゴである以上、水中に投入された瞬間からバラケはじめたエサは徐々に小さくなっていく。そのバラケ方は使用する品種によっても異なるし、ヘラの寄り具合によっても大きく異なってくる。もちろん、狙いのタナ(水深)にも起因すること大であろう。
それらの要素を鑑みつつ、タナに到達した時点でダンゴが小豆大(芯)となり、ハリに残っているかどうか、ここに両ダンゴの到達ポイントがあるのだ。
タナ、ヘラの寄り具合、ウキの大小によってダンゴに使う品種や配合量は複雑に異なってくることは言うに及ばないが、両ダンゴの釣りを驚愕的に激変させたのは、「単品爆釣A」の出現であることに異論を挟む者はいない。
その昔、「エサは練るな」と教えられた。だが当時、全く練らずしてハリ付けできるエサはどこにもなかったから、大いに疑問を感じながらこっそり練って使っていた。
「いや、練っていませんよ。ほら、ダンゴの中はボソッ気が残っているでしょ」と、言い訳するのが関の山だった。
麩エサは、その粒子を潰さないためにも練らないほうがいい。しかし、全く練らずネバリのないダンゴをハリ付けすること、まして、ハリのフトコロに芯を残すことは、マラソンで三時間を切るより、いや、完走することすらに等しいほど不可能に近いのではないだろうか。
単品爆釣Aがそれを変えた。常識を覆した。
「作りたてをそのままハリ付け」の文言通り、素直にハリ付けができ、芯が残せるエサが現れたのだった。文言に表裏はない。そのまま、練らずにお使いいただけるイージーベイト、それが単品爆釣Aなのだ。

清和台天神釣池。
21尺でも底がとれないほどの水深があり、湧水で年中水位は一定している。
大阪のベッドタウンとして宅地開発されて久しいが、今も木々の合間から時折タヌキが顔を覗かせる、自然美溢れる管理釣り場。水深、水の良質さに加えて、多くの釣り人に愛されるもうひとつの理由は、オーナー今井夫妻の朴訥で人柄の良さが池経営にも表れているところ。
森田泰浩、33歳。
「単品爆釣A」の特性を語るならば、彼の釣り方がジャストフィットであると考えた。紀州和竿の故郷が開催した全国レベルの釣り大会において、並みいる強豪を抑えてトップに立ったころから、その釣りに注目してきた。
さぁ、その釣りを、そのエサ使いを、この愛すべき天神池で克明に披歴してもらおう。
快晴。
ダンゴの二三投で、水面下はヘラで湧き立つはず。そこにエサを入れ、狙いのタナまで持たせることができるのか。狙いのタナにダンゴが入る頃、食い頃の芯になるのか、叩き落されてしまうのか、注目すべき第一投が放たれた。

まず、本日の仕掛けを記す。
竿    古今13尺
道糸   プロバージョンV ブラウン 1.2号
ハリス  プロバージョンV 0.5号 55cm/70cm
ハリ   上下グラン 6号
ウキ   彰作 ボディ13cm PCトップ(7節)
「すみません、私ごときが出しゃばるようですが、道糸のプロバージョンVブラウンの使用感だけ言わせてください」恐る恐る、森田は喋り始めた。
「何と言うか、ブラウンは適度な硬さ、張りがあると思うんです。ナイロン素材ですから“しなやかさ”が大事とよく言われますが、ブラウンには硬さと張りがあるから、伸びないし縮れも少ないと思います」
だから、大好きです、と目元だけでほほ笑みながら語ってくれた。
しなやかさ、というのはナイロン素材を伸ばせば当たり前の感触だから、うわっつらの謳い文句。硬い道糸なんて言おうものなら、総スカンを食らいそうなものだが、うわっつらの謳い文句に惑わされることなく、事実を真実として我がアイデンティティとする勇気ある発言と受け止める。その昔のエサを、本当は練らなければハリ付けすらできないのに、「エサは練ってはダメ」的謳い文句を公言してきた過去を恥じ入る次第である。
13尺、チョウチン(天々)両ダンゴ。さて、その配合である。
*単品爆釣A     120cc
*オールマイティ  120cc
*ベーシック    120cc
*グルダンゴ    120cc
*水        120cc
BASICのエサ配合の基本中の基本、「麩4対水1」を忠実に実践したエサを作った。
本音を言うと、オーソドックスすぎて、何かビクビクしたエサを作ったな、と思った。
「分かりましたか?全然最近の天神池の状況が分からないものですから、とりあえずなんでも入れてみました」
これも一歩ひいた発言だが、実のところは、単品爆釣Aとグルダンゴは軽くて芯が作れ、ベーシックは適度な比重と締め効果、オールマイティは両ダンゴとしてのバラケ性が絶妙という、的を射た配合となっている。

実際に使うエサの大きさはこの通りで、その後、配合を変えようが終始大きさは一定であった。

これからの解説を進めるうえにおいて、ウキの目盛が重要になるので、ここをしっかりと説明する。
まず、ウキトップは森田こだわりの7節。

両バリを付けずに、バランスをとった位置が、1節沈んで、水面に6節出し。

ここで、ハリスを二本付けると、この位置までなじむ。
すなわち、3節分がハリの重みということを、しっかりと覚えておく。
 
それにしても、彼のハリス掛けには、グラン鈎がびっしりと「全員前へならえ」と整列していて気持ちがいい。

さぁ、ここから実釣に入ろう。
エサを二個付けて落とし込む。ウキが立って、ジビジビなじみながら、まずハリなし位置でワンポーズあってから、やがてハリ二本分のなじみが出た位置で止まる。ここですぐに竿を上げ、次の一投へ。
この作業を数回くりかえしたが、まだサワリはない。
投餌点には、水面下にヘラの影が湧いてきているのだが、13尺のタナにはヘラは寄っていないのだろう。
ウキには、エサの重みが全く感じられない。
「エサが持っていない?」
「いえ、この配合は必ず芯残りします。エサは必ずタナまで届いています」
噛んで含めるように、念を押すように、森田が強調する以上、今使用しているダンゴをボウルでテストしてみた。
 
実際にハリ付けするエサ。

そのまま、ボウルの中で大きく揺すってみる。

水中から出してみると、芯は残っている。

もっと大きく水中で揺すってみる。

芯は小さくなったが、きっちりと残っている。

当然のことながら、使用したエサは特別に練り込んだりはせず、実際にハリ付けする要領で軽く丸めただけのもので、水面直下に湧いているヘラに叩かれることを考え、ボウルの中でも大きく何度も揺すった結果である。周りの麩はバラケてしまうが、その核をなす食い頃、いわゆる芯は必ず残ることを立証できた。
その上、エサを練り込んで作ったものではなく、エサ、とりわけ「単品爆釣A」の特性がここに生きているのだという。
「Aのチ・カ・ラですよね」
森田が、目尻一本の皺で笑っている。

ウキを追っていたレンズがこのような写真を撮らえた。
エサ二個が飛んでいく。

その時、すでに写真の端にはヘラの影も見える。
エサが着水した瞬間の絵。

やさしく、ゆっくりとエサを落としたつもりでも、エサが受ける衝撃はこれほどのものなのか、と驚かされた。偶然が撮らえた一枚だが、カルチャーショックをまともに受けた。
エサは、ヘラに煽られ削られ、深い水深に届くまでオモリに引きずられ削られるばかりのみならず、着水時にも相当な衝撃で破壊され削られていたのである。
「Aはそれを可能にしたのですよ。そして、タナに入った頃に食い頃になっている芯だけでは、ウキにその比重は伝わらないのですが、エサが持っていないと勘違いして、練りを加えるのが一番の失敗なのです」
作ったエサを、そのままハリ付け。
人工的に、ボウルの底に擦りつけるようにしてネバリ、腰を出さなければハリ付けすらできなかった遠い過去のエサとは大違いのダンゴエサが、ここに現にある。
打ち込み時のショックに耐え、ガサベラに揉まれ、大きなオモリに引きずりこまれながらも、フトコロに芯を残すダンゴエサが、現にここにあるのだった。

「ウキの入り方が不安定になってきたでしょ。ほら、ここで少し待ってくれるのが理想的なのですが」
それは、ハリなし目盛から前後1節が見え隠れする位置であった。       
森田の言う「食わせ処」の核心が近付いてきた。
トップがハリなし目盛になった時点で、オモリは垂直に下がっている。そこから前後1目盛は魚の押し、水圧、道糸の張りで出たり入ったりする。ここでワンポーズあるということは、オモリを基点に上下ハリスの長さ分のタナにヘラが集中してきたということである。やがて、ハリスが倒れ込む。イメージはオモリを基点にV字形だが、魚の煽りにとんでもない落下をするのだと想像する。
ヘラは、この落下途中のエサが一番安心して食いやすい、と考えるのだ。すなわち、このトップで黄2 → 緑3→ 赤1となじむ3目盛が勝負位置なのだ。もう一度考えて欲しい。
赤1を通過してウキがなじめば、エサは垂直にぶら下がっていることになる。垂直にぶら下がったエサをヘラは何の警戒心もなく口にするだろうか。ユラユラと自然に近いかたちで落下するエサと、垂直にぶら下がったエサ。どちらに軍配があがるのか、あれこれ説明する必要のない自明の理である。

この3目盛に出るアタリには、何でも手を出す。
「あれ、アタリ?」と、つい口に出てしまう場面が何度もあった。
オノマトペ(擬音)で羅列すると、「スッ」「フッ」「・・・」、とにかく表現が難しすぎて如何ともし難いものがある。
「ハリスが長いですし(今日は55cm/70cm)、まだ張りきっていない間での食いアタリですから、ツンアタリはまず出ません。とにかくウキに変化があれば手を出しますね」
「それが勝負の3目盛ですか?」
「もし、それで空振りならば、エサが食い頃の大きさになっていないか、あるいは、ハリから転げ落ちたかのどちらかですから、次はエサが付いていたのか、付いていなかったのかを試します」
「転げ落ちる?」
「何度も言いましたが、このエサは必ず芯残りします。ハリスが垂直にぶら下がったあともハリには残っています。ヘラが寄っていればエサの重みではなく、煽りなどでなじみを見せることもあるんですが、エサの芯がハリのフトコロの中心線をはずれると、転げてしまうこともあるのです。だから、この3目盛の間にエサが大きく残っていたことが原因の空振りなのか、ノーバイト(転げ落ちて)だったのかをすぐに探ります」
「探り方は?」
「次の一投は、エサをしっかりハリ付けします。決して練り込んだりはしません。これで必ずタナまで持ちますから、空振りならエサの残り過ぎと考え、これで釣れれば、前回はエサが転げ落ちたと判断します」
エサは、絶対に「持っている」。
持っているのだが、転げ落ちることもある。
「転げない程度で持ち過ぎない」のせめぎあい、接点を探っていく。
これを、勝負の3目盛で演出する森田の両ダンゴ。
「やっぱり、この釣りを可能にしたのはAでしょ」
笑う顔をよく見ると、ディンプルに見えたのは「痘痕も笑窪(あばたもえくぼ)」では断じて無いと、念を押しておく。

「少しエサの開きを抑えてみます」
散々、釣り込んだあと、エサ替えを提案する。
「今日は、平日ですし空いてますから、本当はA単品でもいいんですけどね」
と言いながら、
*単品爆釣A   120cc
*グルダンゴ  120cc
*ベーシック  120cc
*水      120cc
で、かき混ぜた後、
*単品爆釣A   120cc
を加えると、実に大雑把にかき混ぜた。
出来上がったエサは、Aの粒子がまばらに浮いていて、均一感は全くない。
「よく何回かき混ぜるか、克明に数える人もいますよね?」
「はい、でも、かき混ぜるのは練り込むのではなく、異なった品種が均一になるようにするためですから、回数は関係ないと思います。逆に、今のように最後にAを一杯加えた時などは、ごはんの上にふりかけをかけるように、まだら、まばらがいいので、ほとんど混ぜません」
そして、この方が、Aでもボソ感が出せるのだ、と強調するのだった。
かつて、ボウルの底に擦りつけるようにしてエサに腰をつけていた時は、擦りつける回数を数えながらやったものだ。だが、BASICのエサは、作ってそのままで腰があるから、練り込む必要がないし、練り込むことはご法度。麩を入れ、水を入れたら、均一になるようにエサを起こすようにしてかき混ぜるだけだから回数ではないのだ。
オールマイティを抜いて、Aを増やしたエサは、余分な開きが抑えられ、「黄2」の位置でのワンポーズ(トメ)も短くなったようだ。そして、そこからフッとトップが不自然に入る。これが全てヒットするようになってきたから、もう誰にも森田を止められない。
120ccカップで作るエサは、量的にも少ないが、それだけに使い切る前に、残っているエサボウルそのままに、その中で次のエサを作っていく。いわゆる使い切り状態で、経時変化する前にエサを使い切れるように考案されたのも、120ccカップに対するBASICの「こだわり」であることを知る釣り人は多い。
「私のダンゴはA抜きではありえません。そして、私がお見せできるのはこの程度です、すみません」
取材最後に、謙虚に、健気にも森田がまた笑って言った。
ディンプルは、やはりエクボのようだった。


[森田泰浩 プロフィール]
・1981年生まれ 大阪府高槻市在住
・2009 HERA-1グランプリ 全国大会優勝
・2012 シマノジャパンカップ 全国大会出場 など
常に新しい観点で釣りを捉え、自分の武器として実践・活用していくことで、各競技会で頭角を現す新進気鋭のホープ。

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