へら鮒情報局

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バラケエサに興味を示さなければ、ヘラ鮒は寄ってこない。だがそのバラケエサに興味を示しすぎると、カラツンの原因を誘発したり、クワセエサには見向きもしなくなる。複雑で出口の見えない陥穽に嵌り込むセット釣りの難しさは、まさにこの点にあるといっていいだろう。
上バリはデコレーションで、下バリこそが本命だよ、と決めつけたのは人間の勝手な押し付けであり、当のヘラ鮒にすれば上バリであろうが下バリであろうが、美味そうな方を食うに違いない。上バリのバラケエサを食ってもいいのだが、セット釣りのリアルシーズンには、そこまでファイトするヘラ鮒はいないから難題だ。
「興味は示すが、アタックされないバラケエサ」
「クワセエサを口にさせるためのデコレート・アンティパスト(前菜)となるバラケエサ」
「そして、それぞれがドンピシャでヘラ鮒の目の前に落下するタイミング」
この三点が見事に演出されたときこそ、セット釣りが結実するのだと考えるが、言うは易し行うは難しのことわざ通り、そうそううまくいくものではない。
そこで今回は、御存じ橋本幸一に出番を願って、セット釣り徹底解明を図ることになった。

岐阜県海津市つつじ池。
長良川・揖斐川という大河に囲まれた三角州の中、分流である大江川のワンドを仕切った管理池である。水深があること、以前から大型が出ることで、常に大勢の釣り人で賑わいをみせている中京地区屈指の老舗である。
水深がある(平均水深6m強)池だから、本日は浅ダナ(1m)と深宙セットの二本立てでいきましょう、と取材内容を決定する。
まず、1mのセット釣りからスタートすることとして、仕掛け・エサの準備を進めた。

[仕掛け]
竿    古今8尺
道糸   プロバージョンVグリーン0.8号
ハリス  プロバージョンV上0.5号8cm 下0.35号25cm
ハリ   上グラン鈎5号 下オカメ3号
ウキ   忠相アローG M
[バラケエサ]
*バラケルペレット…30cc
*粒ペレF…60cc
*水…180cc
*単品爆釣E…360cc
*ミッド…120cc
<クワセエサ>
*レンジタピ
作り方:1袋に対して水60cc+牛乳10ccをよく混ぜ、800wのレンジにてまず60秒加熱する。一旦取り出しダマを取るようにかき混ぜ、次に90秒加熱、その後30秒づつ二回同じ作業を繰り返す。

以上準備が整ったので、仕掛けのそれぞれのアイテムから、橋本の解説を受ける。
まず、竿について。
「古今は私自身が設計監修した逸品だと自負しています。へら竿に求められる俊敏性、反発力、操作性等の機能は遺憾なく装備されていると思いますし、デザインも今までにない洗練された色合いが出ているはずです、何よりこの価格では文句の付けようがないでしょう」
次にラインについて。
「VARIVASの定番、グリーンがやはり愛着がありますね。スーパータフコーティング加工(SP-T)された道糸は、伸びない縮まないへら鮒界NO.1の道糸といっても過言ではありません」
最後はハリに関して。
「グラン鈎は万人が認めるVARIVASブランドのトップスターですから口を挟む余地はないでしょう。オカメ鈎はウドンが抜け落ちしないようポイント打ちしてあり、ウドンセットによく使います。他にグルテン鈎、ダンゴ鈎、ウドン鈎などがありますが、用途別に使いこなせればへら釣りの次のゾーンを垣間見ることができると考えています」
続いて、肝心要のバラケエサへの解説を願う。
「あれもこれも説明していてはなかなか頭に入るものではないので、特筆すべきものだけを述べますね」と、前置きしたのちに、
「やはり単品爆釣! オカメバラケEについては、今日のキモだと思うので、紙面を割いてください。普通、バラケエサといえば縦に横に大きくバサバサとバラケることをイメージしがちですが、果たしてそうでしょうか。特に、ヘラの活性が乏しいこの季節においては、バラケエサをバンバン打って寄せるというより、チリチリと細かくスポット的にバラケるエサがいいと考えます。寄せるイメージよりもその場にヘラを足止めさせて、いかにクワセエサに興味を惹かせるか、というイメージでいくとオカメバラケEが最も適していると思うのです」
冬場だからといって大きくバラケる必要はない。いや、むしろ冬場だからこそクワセエサを細かく包み込むようなバラケエサが適している。それにはオカメバラケEが凄くマッチしていると強調するのだ。
「もうひとつだけ、粒ペレFも強調させてください。ご存じのように粒ペレFは吸水しても形が崩れません。粒状の形を維持したまま、ポロポロと落下していきますからヘラに強力にアピールするというのが謳い文句です。しかし、ヘラが粒ペレFを口にできるかというとそうではありません。なぜなら吸水した粒ペレFは落下速度が速くヘラも追いきれないのです。なのに、何度も何度も目の前を落下していくことで、ヘラはその元ある所を目指します。それがバラケエサの塊がぶらさがっている位置です。臭覚と視覚の両面からヘラにバラケエサの位置をアピールするため、形が崩れない粒ペレFが生まれたのです」
麩系の配合エサとの吸水時間のタイム差を補うため、粒ペレFや粒ペレGといった品種は先に水で溶く使い方をする。     

数分放置して、粒ペレが充分吸水したのちに麩エサを混ぜるようにすることでそのタイムラグを埋めるようにするが、今度は粒は吸水することで粉状に崩れてしまう。すなわち、粒が粉末ペレットになってしまうから、粒ペレットとしての役割が果たせないということになってしまうのだった。こういった性質をみごと改善したのが粒ペレFなのである。
粒ペレFも粒ペレGも、吸水前は粒状の養魚用飼料ペレットとして、その効能力に何ら差はない。だが、当製品に限らず従来品は全て吸水することでその形状が崩れてしまう。崩れてしまうが、粒ペレGに限って言えば良い意味でのネバリを出してくれる。話は前後するが、橋本はその経時変化を逆手にとって、深宙では粒ペレGを多様するようにしている。エサの特性をよく知ることで、ネガティブなこともポジティブに変えてしまう橋本の脱固陋さを窺い知るFとGなのだった。

「ほら、これアタルよ」
バラケエサが先に入っていって、下バリのウドンが入ろうとした時に、かすかな「受け」が出た。
待ってました、のタイミングに橋本からgoサインが出る。バラケがいいタイミングで抜けると同時にツンアタリが出る。               

「今の撮れた?今のこそが、前ブレから食いアタリまで理想の形だよね」
ズシリと重そうな新ベラを掬いながら、橋本はシャッターチャンスを逃していないか訊いてきた。
バラケエサの重みがウキに負うかどうかの瞬間に、ヘラがサワってくる。このアオリでバラケはほぼ抜けてしまう。しかし、ウキは水圧、魚のアオリ流圧等で若干のなじみ幅を出す。そこから下バリの比重がかかろうとする時に、それを持ち上げるようなかすかな動きがある。バラケエサはすでにハリから抜けてしまっているので、ウキは復元力ですぐに戻ってくる。この時、オカメバラケEの微粒子が、ミッドの縦の方向性に助けられながらウドンを包むようにデコレートする。
「バラケエサとクワセエサの同調」が、こうして結実される。
「上でのサワリが早いようだとバラケをシメます。逆に遅いと開きを早くします。要はエサのぶら下がっている周辺にヘラを集めろということですね」
タナは1mだから、垂直に仕掛けがぶら下がれば、実際の深さはそれにハリスの長さとウキがなじんだ分だけプラスされ、実寸1m45cmのタナを釣っている計算になる(ウキからオモリまで1m + 下ハリス35cm + ウキなじみ幅を含んで10cmとする)。
この1m45cmを基点として、上下何センチ以内にヘラを集めるのが理想なのだろうか。いや、何センチ以内に集め続けた者がタナを作れるのか、ということなのだろう。
ヘラを1m45cmの「点」に留めておくことは不可能である。留めておく上下幅をなるべく狭くするためにバラケエサを工夫するのだ。対処法の基本はまず配合例、次に手直しがあるが、ここではあえて質問方向を変え、橋本にエサの付け方やいじくり方での対処法を尋ねてみた。
「まず、エサを付ける時の大小による区別があります。大きくハリ付けしたから大きくウキがなじむとは限りません。大きいバラケをラフに付けるのと、小さいバラケをしっかり付けるのではヘラの寄せ方に差が出ますし、なじみ幅も変幻自在ですから、皆さんよく使われるでしょう。次は手水で柔らかくしますと、沈下速度が速くなりますから、これもなじみの変化をつける時には効果的ですね。もちろん、水分の少ないエサは逆に落下速度が遅くなるから、こんな手もあるということです。後は、バラケエサのハリの位置をどこに持ってくるか、という方法もあります。下のイラストで説明しますと、①が普通のエサとハリの位置関係で、最もハリのフトコロにエサが残るはずです。ということは、②は残り方が少なくなる方法です。そして、あまり知られていない方法が、③です。これだとボソッと抜けますからこれが効く時もあるんですよね」

なるほど、面白い話が聞けた。
タナを作るということは、より狭小な範囲にヘラを集めるということ。そのために最も重要なアイテムがバラケエサであることは言わずもがななのだが、単純にあのエサ何杯、このエサ何杯で済まされない妙手を披歴してくれた。時節柄、さすがにイレパクとはいかないが、勝手知らないアウェーのつつじ池でも他を圧倒する釣果をカウントして1mウドンセットを終えた。

さあ、午後からは10尺の古今を継ぎ、ウキを仕掛けいっぱいの高い位置にセットする。チョウチンウドンセットの開始である。
まずバラケエサを作り替える。
*バラケルペレット…30cc
*粒ペレF…60cc
*粒ペレG…60cc
*水…240cc
充分に吸水するのを待ってから、
*宙バラ…240cc
*単品爆釣D…240cc
*サラ…120cc
を加え、底からエサを起こすようにして均一になるまでかき混ぜる。
前述したように、ここで「粒ペレG」を用いたのは、吸水後のネバリを利用して、タナが深くなった分エサ持ちをよくするためである。粒ペレFは吸水しても形が崩れず、ヘラの目の前をポロポロと落下していくことで投餌をアピールする。粒ペレGは吸水することで適度なネバリをエサ全体に与え、そのことがハリ持ちのよさ、ハリ付けのしやすさに繋がっていく。FとGの絶妙なコンビネーションを橋本はうまく利用しているのだ。
さて興味深いのはあとから混入した、宙バラ・単品爆釣D・サラの三品種だろう。
まず宙バラは、吸水しても麩が立っていて、ボソっ気を失わないためバラケ性に優れている。そして単品爆釣Dは、強い集魚力を持つ麩が水中を漂い続けることでヘラの足を止める。サラは言うまでもなく、BASIC最強のバラケ性を備えていて、いくら練ってもネバリがでない。このビッグスリーバラケエサを、粒ペレFとGが、下に下に落していく。
橋本の狙いはここにある。
それだけではない。
橋本のチョウチンセットは、バラケエサを大きくハリ付けしてしっかりタナまで入れていく。すると当然、ウキは潜ってしまうから、タテサソイしてバラケエサを振るい落しにかかる。この振るい落とす作業がこの釣り一番のミソであり、この時、バラケエサがブワッと煙幕状に膨らまなければ意味がない。

煙幕状に膨らんだ粒子が、宙バラでありDであり、サラなのだ。やがてその煙幕の中を、これも煽られた下バリのウドンが漂いながら落ちてくる。この動作を三、四回繰り返す内に、煙幕とウドンが「同調」すると、ヘラが食い付くという仕組みなのだ。
10尺のタナまでは、極力バラケないように粒ペレGのネバリや比重で届かせる。届くと今度はその場で漂うバラケ方をさせる。バラケさせるのは人為的な方法だが、バラケて残るのはエサそのものの性質なのである。
同じバラケエサひとつとってみても、浅ダナ、深宙でこうも違うし、もちろんヌキ系か持たせ系でもかくも違うということなのか。
この釣りで一番大事なことは、ウドンの入り方が分かっているかどうかですよ、と橋本は力説する。
下バリの入り方は、ハリスの長さでも異なるし、魚の寄り具合でもさまざま、そして、ウキによっても大きく異なる。まず、自分のウキを選択する。銘柄を問うのではなく、自分が慣れ親しんだウキがベストと考えれば間違いないが、要はそのウキが汚れていないかどうかを確認しなければ意味がない。トップ、ボディの汚れはバランスオモリのみならず、なじみ方にも影響が出る。

次にハリスの長さの違いによる下バリの入り方について検証してみる。例えば、30cmと50cmのハリスでは50cmのほうがゆっくり入っていくのは自明の理である。ゆっくり入っていく方が、ヘラの活性がよくない時には有効的だから、冬場は下バリが長くなる。これも自明の理。
では、何センチがいいのだろうか?という、おそらく誰もが最初に投げかけるであろう疑問をぶつけてみた。
「下バリの長さは、その池の最近の状況と、まあ、口はばったいですが勘のようなもので決めていますね。例えば、上バリ10cm、下バリ50cmでやり始めたとします。エサを打ち始めてみて、その時の下バリの入り方を真剣に追うことで、ヘラの寄り具合が分かってくるはずです。サワリがどの位置で出ているのか、そこへ下バリが入っていくためには、バラケエサをどの方向に持っていくのか、ということですから、要は下バリの長さが先にあり、それに合わせるようバラケエサを調整しているのです」
橋本は、先に下バリ50cmの長さがあり、それに合うようにバラケエサを持っていくべきだと言う。翻って言えば、そのままのバラケエサで下バリを80cmに伸ばせば、今までの組み立ては一気に崩れ去るということなのだ。だから、ハリスを伸ばす時、縮める時というのは、よほどジアイが好転しない最後に近い手段だと言えるのかもしれない。
上からのサワリが多ければ、バラケを締め、逆ならばもっと抜けるようにする。この基本があってこその下バリの長さなのだ。
タテサソイを繰り返す。
その時の下バリの入り具合。
かすかなトメ、いや、あるかなしかのぎこちなさ、
――――――――――― きらきら光るへら鮒を、玉網に掬った。

つつじ池の天候を左右する多度山が、春告げ化粧を施しているように見えて仕方なかった。

 

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